労働災害申請手続き
労災保険の申請は、原則として被災した労働者本人または遺族がおこないます。
実際には、請求手続を会社や会社と契約している社会保険労務士が代行することが多いと思われますが、あくまで申請の主体は被災した労働者側です。
代行を依頼する場合には、申請前に書類の記載に不備がないかなどを労働者側としても、しっかりとチェックしておく必要があります。
申請先は被災者の勤務先を管轄する労働基準監督署長宛になります。
労災請求用紙や添付書類を提出する必要があります。
支給請求書には事業主証明欄があり、原則として、被災事実や賃金関係の証明印を得ておく必要があります。
なかには会社が記入を拒むこともありますが、その場合は、拒まれた旨を用紙に書いて、提出すれば問題ありません。
証明は必須ではありません。
労災保険の申請には時効があります。
基本的には、給付ごとに請求権が発生してから2年以内とされています。
例外的に、障害給付(傷病が治癒した日の翌日から起算)と遺族給付(被災労働者が亡くなった日の翌日から起算)については5年以内とされています。
時効については細心の注意を払いましょう。
労災保険の申請があると、労働基準監督署は、必要な調査を実施して労災認定をしたうえで給付を行います。
被災者本人または遺族にとって労災保険の申請は、初めてのことである場合が多く、ご自身で申請をしないといけないため、手続きに不安を覚えられる方も多くいらっしゃいます。
そこで、複雑な労災保険の申請を行う際には、ぜひ弁護士に相談してみることをオススメします。
弁護士は、被災者・遺族の労災保険申請手続きをサポートします。
書類に労働者にとって不利な記載がされていないか等もチェックします。
申請手続でお困りの方は、弁護士にご相談してみてください。
労災保険として請求できる内容
⑴療養(補償)給付申請
・「療養の給付」の請求(様式第5号)
労災病院または指定病院等で治療を受けるための請求です。
「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式第5号)に必要事項を記入して、療養を受けようとする病院・薬局等を経由して、所轄労働基準監督署長に提出します。
なお、帰郷などを理由にすでに通っている労災指定病院から他の労災指定病院に変更する場合には、療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更届)(様式第6号)を変更後の労災指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出します。
・「療養の費用」の請求(様式第7号)
労災病院および指定病院以外の病院等において療養を行った場合に、立替えをした治療費等について、事後的に給付を受けるための請求です。
整骨院で手当てを受けた場合もこの請求を行うことになります。
「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号)に必要事項を記入し、所轄労働基準監督署長に提出します。
労災指定病院等以外から受け取った領収証を添付する必要があります。
⑵休業(補償)給付申請(様式第8号)
休業して賃金を受けられなかった場合の補償を受けるための請求です。
休業して第4日目から受け取ることが出来ます。
「休業補償給付支給請求書・休業特別支給金支給申請書」(様式第8号)に、必要事項を記入し、事業主および主治医の証明をうけて、所轄労働基準監督署長に提出します。
休業した全日数分を一括請求するのか、または分割請求するかは、労働者が自由に選ぶことが出来ます。
休業が長期間に及ぶときは1カ月ごとに請求することが一般的です。
添付書類としては賃金台帳、出勤簿の写し、同一の事由によって障害基礎年金や障害基礎年金を受給している場合にはその支給額を証明できる書類が必要です。
⑶障害(補償)給付支給申請(様式第10号)
障害(補償)給付は、業務上の傷病が治癒した後、障害が残った時に支給される保険給付です。
第1級から第7級の重い障害に対しては障害補償年金が支給され、第8級から第14級までの障害に対しては障害補償一時金が支給されます。
「障害補償給付支給請求書・障害特別支給金・障害特別年金・障害特別一時金支給申請書」(様式第10号)に必要事項を記入し、所轄労働基準監督署長に提出します。
添付書類として、①負傷または疾病が治ったこと・治った日・治った時の障害の状態に関する医師の・歯科医師の診断書、②レントゲン写真等の資料を用意する必要があります。
障害厚生年金・障害基礎年金等の支給を受けている場合は、その支給額を証明できる書類の添付も必要です。
⑷傷病補償年金の手続き
傷病補償年金は、被災労働者が業務上、負傷・疾病を負い、療養開始後1年6ヶ月経過した日又は同日後において傷病が治っておらず、厚生労働省令で定める傷病等級1級から3級に該当する場合に支給されます。
傷病補償年金の支給・不支給は、労働者の請求により支給が決定されるものでありません。
所轄労働基準監督署長の職権によって支給が決定されます。他の労災保険とはこの点で性質が異なります。
もっとも、療養開始後1年6カ月を経過しても傷病が治っていないときは、その後1カ月以内に「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。
療養開始後1年6カ月を経過しても、傷病(補償)年金の支給要件を満たしていない場合は、毎年1月分の休業(補償)給付を請求する際に、「傷病の状態等に関する報告書」(様式第16号の11)を併せて提出する必要があります。
⑸遺族(補償)年金給付申請
・遺族補償年金(様式第12号)
遺族補償年金の受給資格者になれるのは、労働者の死亡の当時、その収入によって生計を維持していた労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。
妻以外についての者は被災労働者の死亡の当時に一定の高齢または年少であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが必要です。
「遺族補償年金支給請求書」(様式第12号)に必要事項を記入し、所轄労働基準監督署長に提出します。
添付書類としては、①労働者の死亡事実および死亡日、労働者との身分関係を証明することが出来る書類、②被災労働者と請求人との関係を証明することができる戸籍謄本等、③請求人が被災労働者の収入によって生計を維持していた事実を証明することのできる書類、④同一の事由により遺族厚生年金等が支給される場合には、その支給額を証明することができる書類が必要です。
なお、遺族補償年金の支給を受ける際に、まとまったお金が必要な場合は、遺族補償年金前払一時金として、給付基礎日額の1、000日分を上限に一時金の支給を受けることが可能です。原則として、遺族補償年金の請求と同時に遺族補償年金前払一時金請求書を提出します。
・遺族補償一時金(様式15号)
遺族補償一時金は、被災労働者の死亡の当時、遺族補償年金の受給資格者がいない場合に、給付基礎日額の1、000日分が支給されます。
「遺族補償一時金支給請求書」(様式第15号)に必要事項を記入し、必要な証明書類を添付して所轄労働基準監督署長に提出します。
遺族補償一時金は、支給が決定されてすぐに支給されます。
⑹葬祭料(葬祭給付)給付申請
「葬祭料請求書」(様式第16号)に必要事項を記入し、事業主の証明を得た上で所轄労働基準監督署長に提出します。
⑺介護(補償)給付申請
「介護補償給付申請書」(様式第16号の2の2)に、必要事項を記入し、医師の診断書や介護に要した費用の証明書を添付して、所轄労働基準監督署長に提出します。