木造建物の解体作業中に発生した労災に関する解決事案
事案の概要
相談者の子が木造建物の解体工事を行っていたところ、解体中の壁が倒壊して下敷きとなり、いわゆる遷延性意識障害の状態(後遺障害等級第1級相当)となった。
壁が倒壊したときの状況について労働基準監督署の調査により明らかになっていたものの、使用者及び元請事業者に安全配慮義務として採るべきであった措置及びその根拠等が問題となった。
なお、当法人の弁護士は、先行して、相談者を成年後見人とする成年後見申立ての補助を行い、労災申請の補助も行った。
依頼のきっかけ
相談者は、当法人の従前お客様のご紹介でご相談に来られました。
弁護士は、先に成年後見申立てを行い、労災の申請を行う必要があるなどの手続の住所や予想される反論や和解案・判決などの見通しを説明し、相談者は依頼を決めました。
交渉・訴訟の経緯
相手方らは責任を争い(被災者自らが危険な行動に出た結果であって安全配慮義務違反はないなど)、交渉での解決は不可能と判断されたので、闘いの舞台は訴訟に移行しました。
請求額は億を超えるような事案でしたが、相手方会社の資力の問題があり、和解の金額は数千万円にとどりました。もっとも、労災及び社会保険からの手厚い補償が確保されていましたので、今後の治療には特に支障をもたらすことはありませんでした。
弁護士の目
労災事案では、企業の安全配慮義務を設定する上でまず労働安全衛生法を参照します。同法は幅広い分野において企業が労働者の安全を守るために講ずるべき措置を規定していますので、同法に反していたということになれば、企業の責任は認められやすくなります。
但し、同法の定めは曖昧で、訴訟では事案に即して義務の内容を具体化する必要があります。その作業をするためには、労働安全衛生法の規定が設けられるようになった根拠(さらには背景となっている技術的知見等)まで遡って調べることもあります。
労災=企業の民事責任ではありませんので、企業に対する民事責任の追及は類似の裁判例や安全配慮義務等の設定は十分な検討を経て行うべきで、労災だから企業の民事責任が認められると安易に訴訟提起してしまうと本来賠償されるべきであったものが賠償されないといった結果にもなりかねません。
また、事故状況がはっきりしないと厳しい闘いを強いられることになります。その意味でも、万が一、労災に遭ってしまったら、適切に労災の申請を行うようにしておかなければなりません(労災申請がなされれば通常は「復命書」という書類が労働基準監督署によって作成され、事故状況がある程度明らかにされます。)。
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