高所からの墜落事故によって、高次脳機能障害等で1級の認定を受けた被災者が被災から6年後に示談をした事例
事案の概要
被災者 60代 男性
職業 正社員
被災内容 頭部外傷後の高次脳機能障害
依頼のきっかけ
被災者は建物解体工事の作業中に足を滑らせて4階の高所から墜落をしました。一命を取りとめたものの、安全帯を装着していなかったため、重症を負いました。その後も長期間の治療をしましたが、高次脳機能障害が後遺し、最終的には施設で生活することを余儀なくされました。
このような状況で、労災保険からの補償がなされるのみで、会社からの補償が何もなされないことに疑問を感じた家族(子ら)が相談に来られました。
相談の結果、会社に対して安全配慮義務違反を主張できる事案であると判断されたため、ご依頼をお受けすることになりました。
交渉の経緯
ご依頼の時点ですでに会社を退職してから長期間が経過していました。そのため、会社に対して連絡文を送った時点では、すでに事故から5年が経過しており、会社の反応は「いまさら」というものでした。
とはいえ、法律上の時効期間(法改正前であったため10年。法改正後は5年)を経過しているものではありませんでした。そのため、会社に対して、時間は経っていても安全配慮義務違反が認められる限り、賠償責任を果たす必要があることを説明し、交渉を始めました。
具体的な賠償金額を提示したところ、会社側も深刻な事態を理解したのか弁護士に依頼をし、以後は弁護士間での交渉を進めることになりました。
交渉において、会社側の弁護士から、高齢であるため逸失利益は発生しないとか、労災保険金の支払いをもって慰謝料に充当させる計算を採用する等の主張がなされました。その結果、会社側に支払義務はない(ゼロ回答)、というのが会社の当初のスタンスでした。
しかし、当然、これらの会社側の主張は、判例等からして誤りでしたので、当方からはその旨を反論(説得)しました。
結果として、過失相殺はありましたが、当初から大幅に支払金額を増額させる内容(上記の誤った主張を撤回し、裁判基準による内容)で示談をすることができました。
弁護士の目
会社に対して損害賠償請求を行うことは、会社を退職した後、ある程度の期間が経過していたとしても、時効が成立していない限り可能です。
確かに、今回の事案のように、一定期間が経過していると会社も争ってくる可能性が高まることは否定できません。しかし、法律や裁判例をもとに、丁寧に交渉をすることで、最終的には裁判によるリスクを踏まえて、会社側が交渉態度を軟化させることはよくあることです。
「いまさら会社へ請求しても認められない…」と即断するのではなく、まずは専門家である弁護士に事案の見通しを相談し、時効の成否について確認をすることは極めて重要になります。
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