仕事中にプレス機によって事故に遭ったことで労災が認定されたときに、得られる補償・賠償について

プレス機による事故は、製造・加工業等で発生することが多い事故類型です。

特に、はさまれ・巻き込まれ事故の発生が多く報告されています。プレス機には安全装置がついていますが、安全装置が故障している、誤作動を起こした、あるいは何らかの理由でOFFにしていた等の事情によって、事故が生じてしまいます。

また、作業時の操作ミス、連携ミスによって、事故が発生することもあります。

 

プレス機による、はさまれ・巻き込まれ事故が発生すると、指や手、腕、または足等を切断することになってしまったり、最悪の場合、死亡事故に至ったりすることもあります。

 

ここでは、仕事中にプレス機によって事故にあったことで労災が認定されたときに、得られる補償・賠償について解説します。

 

補償・賠償の内容としては、①労災保険からの支払、②会社(または加害者)からの民事上の支払の2点があります。

 

①労災保険からの支払としては、治療費(療養補償給付)、休業損害(休業補償給付)、交通費(移送費)等があります。これとは別に、後遺障害を残した場合には、逸失利益(障害補償給付)、介護が必要になった場合には介護補償給付等の支給がされます。

 

プレス機による、はさまれ・巻き込まれ事故の場合、受傷内容によって、以下のような後遺障害が残る可能性があります。等級は1級~14級まであり、1級が最も重い後遺障害になります。

 

・上肢/手指の障害として、欠損障害(腕を切断する等)・機能障害(指が曲がらない等)・変形障害

 例)両上肢をひじ関節以上で失ったとき…1級の6

    親指から薬指まで4本の手指を失ったとき…6級の7   

・下肢/足指の障害として、欠損障害(足を切断する等)・機能障害(膝関節が曲がらない等)・変形障害・短縮障害(骨折で足の骨が短くなる等)

 例)両下肢をひざ関節以上で失ったとき…1級の8

   1足の足指の全部を失ったとき…8級の10

・高次脳機能障害(脳に損傷が加わったことで、認知機能等が低下する)

 例)生命を維持するための活動すべてについて常に介護が必要な状態となったとき…1級の3

   軽易な労務以外の労務に服することができなくなったとき…7級の3

 

②会社(または加害者)からの支払として、民事上の損害賠償があります。労災が発生したとき、会社に安全配慮義務違反があれば、民事上の損害賠償請求が可能です。請求できる内容は、一部、労災保険からの支払と重複しますが、大きな特徴として、慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)を求めることができます。

 

プレス機による事故は、単独で発生することも多いことから、会社が安全配慮義務違反の存在を争ってくる事案も少なくありません。

 

しかし、プレス機による事故については、安全カバーの取り付けは徹底されていたのか、安全装置は機能している状態であったのか、あるいは機械を使用するにあたって必要な資格や技能を有していたのか、ヒヤリハット事例はしっかりと現場で共有されていたのか、そもそも日頃の安全衛生教育の実施は徹底されていたのか等々、会社側に求められる安全対策は非常に多くあるといえます。

 

したがって、まずは専門家に相談をして、会社に対して安全配慮義務違反を主張できるのか、しっかりと検証してみることが重要です。

 

そのうえで、労災保険からの支払や民事上の賠償を受けることで、少しでも労働者の経済的不利益を解消していくことが大事です。